11月20日(日)の日本経済新聞朝刊に「住宅市場 世界で変調」と、世界の住宅価格が値下がりに転じている旨の記事が掲載されていました。記事では、各国中央銀行がインフレを抑えるために実施している利上げの影響で、今年の夏場以降、米英独など主要国で住宅価格が下落に転じていることを伝えています。
2020年初頭から蔓延した新型コロナウイルスを受けて、各国の中央銀行は金利引下げによる金融緩和を実施しました。金利引下げに加えてリモートワークの普及も手伝い、住宅購入ニーズは世界的に拡大し、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均住宅価格はコロナ前の2019年と比べて35%上昇しました。ところが、今年夏場以降に各国の中央銀行が利上げに動いたことで住宅価格が下落に転じ始め、スウェーデンやニュージーランドでは、2022年年初のピーク時から、住宅価格が▲11%下落している状況です。
では、日本の住宅価格も見てみたいと思います。国土交通省が10月末に公表した今年7月の「不動産価格指数(住宅)」を見ると、全国の住宅価格指数は前月比+1.2%増と今のところ住宅価格下落の動きは現れていない状況です。各国の中央銀行が利上げに動くのとは対照的に日本銀行はYCC政策(*1)にて、金融緩和を継続していることは周知の事実ですが、この低金利環境が現在、日本で住宅価格下落が生じていない大きな要因となっています。
住宅価格は、長期的には国や都市の魅力・価値、人口動態等によって影響を受けますが、短期的には金利の影響を大きく受けます。来年4月に任期を迎える日銀の黒田総裁は、今年9月の記者会見で「当面金利引き上げることはない。当面とは数カ月ではなく、2~3年だ」と発言していますが、果たして黒田総裁の退任後も金融緩和が続くのかどうかは、当面の注目ポイントです。
(*1)日本銀行が2016年9月に導入した「長短金利操作付き・量的質的金融緩和」の枠組みの一つ。短期金利は日銀当座預金のうち、政策金利の残高にマイナス金利を適用して、長期金利は10年物国債の金利が0%程度で推移するように長期国債の買い入れを行うといったことを指す。