先月5月27日、日銀は2022年3月末決算を公表しました。2013年4月、黒田総裁が「2年で物価上昇率2%を達成」という目標を掲げて開始した「異次元緩和」から9年。この間に日銀の財務諸表がどのように変わり、何を残したのかを見てみたいと思います。
「異次元緩和」では、日銀が民間金融機関から年間数十兆円に及ぶ国債を買い入れ続けたため、日銀が保有する国債残高は2013年3月末125兆円から2022年3月末526兆円まで膨れ上がりました。また、国債の買い入れの対価として民間金融機関には日銀から資金が払い込まれますが、民間金融機関が持て余した資金は市中に出回らず日銀内に当座預金(日銀にとっては借入金)として残ります。この日銀内の当座預金残高が2013年3月末58兆円から2022年3月末563兆円まで増加しました。
昨今、世界各国でインフレが進行し、欧米を中心とした各国の中央銀行が政策金利引き上げ等による金融引き締めによってインフレを抑えこもうとしている中、日本でも「異次元緩和」の出口戦略について議論されるようになりました。
ただ、日本の場合、金融引締めのハードルが欧米に比して高いと言われています。少々ややこしい話となりますが、「異次元緩和」による大量の国債買い入れによって日銀自身の財政も金利引上げへの耐性が弱まり、日銀が金融引き締めを行った場合、金融市場に留まらず日銀自身も大きなダメージを受けることが想定されています。
今のところ、黒田総裁は「物価上昇率が安定的に2%を達成するまでは金融緩和を引き続き継続する」と明言していますが、仮に安定的に2%物価上昇率を達成した場合でも、果たして日銀が「異次元緩和」の出口を見出すことができるのか、市場関係者が注目しているところです。